鐘つき聖堂の魔女
「私の容姿だけを気に入っていたあなたならそれで構わないかもしれませんね。けど、私はあなたにいくらお金があろうと、紳士的な面を見せられようともう一度あなたを好きになることはありません」
ピクリとロメオの表情が引きつったのが分かったが、くすぶっていた小さな怒りは言葉を並べるたびに膨らんでいった。
「だって私は知っているのだから。あなたがどれだけ醜い人間なのかを」
「なんだと?」
これ以上口にしては駄目だ。そう思うのに、リーシャは止められなかった。
「だってそうでしょう?そこにいる二人もきっとあなたの家の権力に群がってきたんでしょう。あなたの周りにいる人はいつもそうだった。そこの二人もあなたが本当に危機にさらされた時にはすぐに逃げ出すような、そんな関係でしかない」
ロネガンが鋭い視線で男たちを見ると、男たちは互いに顔を見合わせた後、必死に首を横に振った。
「私に家を与えるのも自分が魔女よりも優位に立ちたいだけなんじゃないの?だったらお断りです。街のごろつきを集めて優越感に浸ってる人の世話になんかなりたくありません」
言い過ぎたと思った時は既に遅かった。
パァン…―――――
静まり返った広場に乾いた音が響く。
それが頬を叩かれた音だと分かった頃にはじんじんと火傷をしたような痛みが左頬を伝っていた。
「リーシャ!」
ジャンの焦ったような声に、魔女と分かってもなお心配してくれるジャンの優しさにリーシャの心が少し安らいだ。