鐘つき聖堂の魔女
「とにかく、お前もあの容姿に騙されないことだな。魔女は自由自在に自分の姿を変えて男を誑し込んで貢がせてるって話だ。俺はノクターンじゃ裕福な家柄の方なんだがな、リーシャは俺の財産目当てに近づいてきて…」
「俺には関係ない」
話半ばでロネガンの腕を振り払い、去ろうとするライルをロネガンは慌てて引き留める。
「まぁまぁ待てって。お前にも覚えがあるだろ?あいつはお前が思ってるような女じゃないぜ?」
「お前の妄想に俺を巻き込むな。リーシャは俺に金を貢がせたことも、媚びたこともない」
ライルはロネガンを鬱陶しく思いながら、ロネガンのリーシャに対する異常なまでの執着にある考えが浮かんだ。
ロネガンはリーシャに未練があるのではないかと。しかしそれは純粋な愛情故のものではなく、歪んだ愛情だ。
おそらくロネガンは自分と付き合っていた女が魔女だったということが周りに知られた時、少なからず白い目で見られただろう。
貴族であるが故プライドが高く、自分が魔女と付き合っていたとあれば街中の恥さらしにあうとでも思ったのか。
自尊心を傷つけられたロネガンの怒りの矛先は他の誰でもない、リーシャに向けられたことだろう。
なぜならそれがロネガンの保身につながるからだ。人とは不思議なもので、自分たちが受け入れられないものに対してはとことん盲目だ。
それこそロネガンがリーシャのことをはじめから魔女だと知っていて遊んでやった、などという言葉を並べれば、人々がどちらの言葉を信じるかなどあまりに明白だった。
虫唾が走る…――――