鐘つき聖堂の魔女
「分かった。リーシャも男には気をつけるんだよ」
「わ、分かってる。こんなこときっと二度とはないわ」
「それを聞いて安心した。では今度こそ出ていくよ」
ドアノブがキーっと軋む音を上げて開く。
差し込んだ光から落とされた影がリーシャに過去を思い出させ、今度は紛れもない寂しさを感じた。
「さようなら」
逆光で眩しいその大きな背に向かってリーシャは無意識に小さく呟く。
ライルは聞き逃しそうなほど小さく呟かれたその言葉に反応し、リーシャを振り返った。
目を丸くして振り返ったライルに、リーシャもまた目を丸くする。
「さようなら?しばらくはドルネイに滞在するんだ。もしかしたらまた街で会うかもしれないだろ?だから、"また"だ」
笑いながらそう言ったライルの言葉にリーシャは胸の真ん中からじわじわと浸透するような心地よい温かさを感じていた。
投げかけられた言葉を噛みしめていたリーシャにライルは繰り返す。
「またどこかで、リーシャ」
「はい…」
リーシャは喉の奥から振り絞ってそう答え、ライルを見送った。
その背が見えなくなるまで――――