鐘つき聖堂の魔女
リーシャは嘘をついてもすぐに見抜かれてしまうほど顔に出る自分の性格を十分に理解したため、決定的な言葉をぼかして説明した。
ライルは「そうだったんだな」と言いつつもまだ少し怪しんでいた。
しかし、それ以上は何も聞いてくることはない。
今朝ライルを家まで運んだ方法を聞かれた時もあまり深くまでは踏み入ってこなかった。
「じゃぁ行こうか」
え?と思った時にはすでにライルは背を向けて歩いており、リーシャは混乱する。
ライルは後をついてくる足音が聞こえなかったため、足を止めて振り返る。
「あの…どこに行くんですか?」
「リーシャの家だよ。送ってく」
「結構です。自分で帰れます」
リーシャはライルの申し出を正面から突き返す。
誰かに家まで送ってもらった経験などなかったリーシャはライルの親切心など露程も気づきはしなかった。
しかし、ライルは真面目な顔をしてその場を動かない。
「日中だったらそのまま見送るが、俺が言ってるのはこの時間だからだ。ドルネイは治安が悪いといっていたのはリーシャだろ」
「私は大丈夫ですから」
「その自信はどこからくるんだか。本当に大丈夫だという証拠を見せてもらうまでこうしてるか?」
ライルの視線の先を追うと、いつの間にかリーシャたちの周りは人だかりができていた。
娼婦は立ち去ったのにまだ散らばらないのは、立っているだけで人の視線を集めるライルがいるからだろう。
リーシャはなるべく目立たちたくなかったため、早くこの場を去りたかった。
しかし、ライルの言う証拠、つまり魔法を見せるわけにはいかない。
「決まりだな」
にっこりと、それは綺麗に笑うライルにリーシャは小さく溜息を吐いてライルの後を追った。