鐘つき聖堂の魔女
家までの帰り道、久しぶりに自分の足で帰ったリーシャはへとへとになっていた。
いつもは浮遊魔法でひとっとびなだけに、日ごろの怠慢が身に染みた。
「送ってくれてありがとうございました」
扉の前で立ち止まったリーシャは振り返ってライルにお礼を言う。
「どういたしまして」
ライルは笑ってそう言って、レットのご飯が入っている籠をリーシャに差し出した。
「じゃぁ俺は街に戻る。戸締まりはちゃんとするんだぞ」
「あの……えっと、もう宿も見つかったの?」
籠を差し出すなり帰ろうとするライルを引き留めたリーシャは自分でも驚きながら声をかける。
「いいや、宿はこれから…といっても日払いの仕事じゃないからね。家賃を支払うだけの蓄えが出来るまでは野宿をしようと思ってる」
「そんなっ…店主さんにお給料を先払いで貰うのはだめなの?」
いくら不景気なドルネイでもそのくらい融通はきくはずだ。
ましてや初日から働かされたのだ、少しくらいわがままを言ったって聞いてくれそうだ。
しかし、ライルはリーシャの問いに首を横に振って答えた。