鐘つき聖堂の魔女
「そんな驚かないでもいいじゃないですか。元はといえばライルが私に提案したんでしょう?」
涙目になりそうなほど顔を真っ赤に染め上げてそう言ったリーシャにライルはフッと笑った。
「なっ…何で笑うの!?」
「いや、やっと名前で呼んでくれたと思って」
それだけではないような気がしてリーシャは納得がいかなかったが、深くは追及してもらいたくなかったのでグッと我慢した。
「けど本当にいいの?暫くは泊めてもらうことになりそうだけど」
「そう言われると考えものですね。もう一度冷静に考える余地をくれるんですか?」
「好意は素直に受け取らせていただきます」
紳士的にもお伺いを立てたライルにリーシャはお返しとばかりにそう聞くと、ライルは深々と頭を下げた。
そして、リーシャの顔色を窺うように顔を上げる。
その時の顔がまるで母の顔色をうかがうジャンと被り、耐え切れずにフッと笑った。
ライルも同じ心境だったのか、リーシャの家の前からは二人分の笑い声が響いた。
「迎えてくれた理由は分からないが、これからよろしく、リーシャ」
ひとしきり笑った後、ライルはリーシャにそう言って手を差し伸べた。
リーシャはもう差し出された手の意味を知っている。
「はい」
今度はしっかりとライルの手を握った。
こうしてリーシャとライルの同居が始まった…―――