鐘つき聖堂の魔女


「お言葉ではございますが、もう少し資料に目を通していただけませんでしょうか」

「資料は事前に目を通している」

「ならば何故棄却されたのか理由をお聞かせいただけないことには我々も納得がいきません」

鋭い視線を放つ男に、一同は一瞬表情を強張らせてたじろいだ。

そして机の上の資料の束を手に取り、上から二枚ほど捲った。



「要はお前たちは居住区をつくって魔女たちをそこに追放したいのだろう?」

「いいえ、とんでもないことでございます。我々はあくまで魔女たちのこと想ってこの案を申し出たのでございます」

「魔女の中にも人間たちの間で暮らすのは躊躇われる者もおります。魔女のための居住区をつくれば人間も魔女も互いのテリトリーで安心して暮らすことができるのです。これほど素晴らしい案はないと思いますが」

たたみかける様に続ける声に男は短い溜息を吐き、視線を上げる。



「どう思うエルザ」

男がそう問いかけたのは隣に控えていた女だった。

女は黒い衣装を身にまとい、少し苛立たしげな表情をして机を囲む者たちを見据えた。



「却下」

凛としたその声はどんより暗い部屋に大きく響き渡った。


「魔女のための居住区?聞こえはいいようだけど私はごめんだわ。しかもこれを読む限り魔女は皆その居住区に強制的に入れられるみたいね。いいこと?魔女にも自由があるの。それを抑え込んでまで居住区に住まわせようなんて冗談じゃないわ」

「魔女がこう言っているが?」

啖呵を切るように言葉を並べたエルザに男はククッと面白そうに笑いながらそう言った。

エルザに圧倒されていた者たちの一人がハッと我に返る。



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