鐘つき聖堂の魔女
承章―ドルネイ帝国―

◆魔術師オリバー



リーシャの朝は早い。

レットに起こされるということもあるが、定例会議に遅刻してはならないという一種の恐怖概念に駆られていることも理由の一つかもしれない。


今日も定刻に目を覚ましたリーシャは気怠い体を起こしてベッドの上で上半身を伸ばす。

いつもはベッドから部屋を見渡せるが、今日はやけに薄暗い。

いつもと違う光景に寝ぼけた頭でそういえば…と昨夜の事を思い出した。




(昨日ライルとベッドの押し付け合いをしたんだっけ)


ライルを迎え入れた昨日の夜、困ったのが寝場所だった。

リーシャの家にはベッドはひとつしかない。

その他寝る場所といえばソファーくらいなものだ。

そうなると体の大きいライルにベッドを譲るのはリーシャにとって当然のことだったのだが、ライルは頑として受け入れなかった。

ライルはリーシャにベッドを譲っただけにとどまらず、ベッドの周りに手作りのカーテンを敷いてくれた。

薄暗いのはカーテンがベッドを囲んでいるためだ。

念のためと思って仕掛けた魔法のおかげで昨夜は安心して眠ることができ、朝までぐっすり眠った。

在りあわせのクッションと布団を集めてソファーに寝てもらったライルには申し訳ないことをした。

木の葉が秋の色に染め上げられ、冷たい風が吹くこの季節に寒い思いをさせてしまったかもしれない。

外の様子を伺おうと髪と瞳の色を変え、そっとカーテンを横に開くと、隙間から入ってきた香ばしい匂いがリーシャの鼻をくすぐった。


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