鐘つき聖堂の魔女
「本当に料理が得意だったんですね」
「これくらいでそんなに感心されてもなんだか恥ずかしいな。リーシャは今まで何を食べていたんだ?」
「朝ごはんは食べないことが多いです。お昼は宮殿で食べて、夜は食べたり食べなかったり」
「それでこんなに痩せているのか」
ライルは不意にリーシャの腕を取りその細さを確かめるように指を絡めた。
「ッ!!」
途端、リーシャの体がピシッと固まる。
腕を掴んでいたライルはすぐに気づき、パッと手を放した。
「すまなかった。昔から女性ばかりの環境で育ったからか、時々女性の気持ちを考えずに動いてしまうことがあって、よく友人から怒られていたんだ。本当にすまなかった」
「いえ、私も過剰な反応でした」
「以後気をつけるよ」
女性ばかりの環境とは姉や妹に囲まれていたということだろうか。
兄弟のいないリーシャにとって家族同士の触れ合いもなかったためスキンシップには慣れていなかった。
しかし、この程度のスキンシップは世間一般では普通のことなのかもしれない。
リーシャは世間ずれしていると自覚があるだけに、反省するように謝るライルに申し訳ないと思うのだ。
「それにしても、食事をとらないのは作るのが面倒だから?」
「それもあるけど…」
「けど?」
先を促すライルにリーシャは俯く。
そもそもリーシャが料理をしない理由は至極単純だ。
しかしそれを口にするのは少し躊躇われる。