鐘つき聖堂の魔女
◆ある休みのこと
「リーシャ、午後は何か予定はある?」
ライルがそんなことを言ったのは久々に良く晴れた日の午後のことだった。
この日は珍しくリーシャとライルの休みが重なり、お互い手持無沙汰な時間を過ごしていた。
「特に予定はないけど、どうして?」
「鬱陶しい雨も上がったし、一緒に中心街まで買い物に行かないか?」
ライルの提案にリーシャは窓の外を見た。
ここ数日、ずっと雨が続いており、休みの日も家に籠っていたが、今日は久々に晴れ間をのぞかせた。
普通なら喜んで応じるだろうが、リーシャの気分は乗らなかった。
「街は嫌…ライルひとりで行ってきて。私はお留守番してるから」
「まぁそう言わず。いつも街を通って宮殿に行ってるじゃないか」
「日中は人通りが多いからあまり行きたくないの。それに私が宮殿に行くときは…」
途中から空を飛んでいるから、とまでは言えないリーシャは口を閉ざした。
「何でもない。とにかく、あまり人ごみが多いのは苦手なの」
「そうか、残念だな。明日は三、四日分の食料を買いに行こうかと思っていたんだけど、リーシャの意見を聞きながら買い物をしたかったな」
頑なに街へ行くことを拒むリーシャにライルはわざとらしく肩を落としながらそう言う。
意見を聞くもなにも、料理はライルに任せているのに、何故意見を聞く必要があるのか。
リーシャはにやにやと笑いながら目配せするライルの意図が分からず、顔を疑問に顰める。