鐘つき聖堂の魔女
「好き嫌いしないで食べてくれるなら何の心配もなく買い物をしてくるんだが?」
「う…」
そうきたか。リーシャはライルの意地悪な物言いに何も言い返すことが出来なかった。
要するにライルは買い物についてこなければ容赦なくリーシャの嫌いな食料を買い溜めてくると脅しているのだ。しかも三、四日分も。
ライルが本当にそんな意地悪をするなどとは考えられないことは分かっていた。
けれど、普段リーシャに強要することのないライルがこうも引き下がらないのが気になり、リーシャは先に折れた。
「分かった…行きます」
「それは良かった。リーシャと街を歩けるなんて楽しみだな」
リーシャは断れないように運んだくせにと思いながらもライルの嬉しそうな笑顔にまぁいいかと諦めた。
休みといえばいつも家で過ごすか、外に出るといってもせいぜいハーバー夫妻の店に行くくらいで他は森に散歩に出るくらいしかない。
元々は外へよく出かけていたのだが、ある事件をきっかけにめっきり機会は減ったのだ。
「三、四日分って、どんな食材を買いに行くの?」
「行ってから決めようと思ってる。リーシャは何が食べたい?」
「セロリアックとルバーブ以外なら何でもいい」
ライルはリーシャが小さく口にした野菜の名にクスリと笑う。
「そんなこと言っていいのか?リーシャは食べたことのないものの方が多いんだから、好きなものを言っておいた方がいい気がするけど?」
「た、確かにそうかも…」