†*†ヴァンパイア学園†*†  巫女姫×王子


俺はと言うと、初めて来た村だし

特に何をするわけじゃなく、伊蕗さんの家の縁側に腰掛け

青く澄んだ空を眺めていた。


どれくらいそうしていただろうか、不意に後ろに着いていた俺の手に

小さな温かなものが触れた。


振り返ると、そこには伊蕗さんと同じ琥珀の瞳をした

艶のある黒髪の、四つん這いの赤ちゃんが

満面の笑みを浮かべて、そこにいた。


あ、あ・・・と、まだ言葉にならない声を上げて

何かを俺に言っているようにも見えるけど

こいつ、俺の事怖くないのか?


ヴァンパイアの世界じゃ、纏うオーラ自体が原因なのか

王子という肩書が原因なのか、怖がられて近寄るものはいなかったから

こんなにも無邪気に、近づいてくるこいつが不思議でならなかった。




「あら、瑞姫ったらココに居たのね。」




部屋の奥から、彩姫さんが出てきて

赤ちゃんを抱き上げた。

彩姫さんは、赤ちゃんと同じ髪をした笑顔の良く似合う女性だった。

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