雪解けの水に潜む、紅


誰しもが知っている話だが、この国はあまり好かれていない。
この国は他国を無力なボロ雑巾のようにしか思っていない。

国のやり方に文句がある輩は皆殺しだ、と王が言うものだから他の国はディルダに関わろうとしない。


平和を主張する他国に満足な軍隊はない。
戦争に必要ならば、農民共を駆り出すだろう。

竜王軍に人間は勝てないと判っているから、極力関わらないことにしているようだ。


部屋中に積み上げられた書類の中には国の政策に対する異議を唱えた国民からの文章もある。
この人も殺されてしまうのだろう、と他人事のように思いながらリストに上げておく。



何故私の部屋にこんな書類があるのか、というのが問題である。


私の存在はディルダ国でしか知られていない。

ディルダの民は私を、影の王様と呼んでいる。
王が私に、罪を被せるからだ。
彼の行った無差別な殺しも何もかも、全て私の命令の元だと言わなければいけない。

それはつまり、どんな内容だったか覚えておく必要があるということで…。





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