雪解けの水に潜む、紅
幾つかある窓から差し込む光が、私の求めている本のありかを教えてくれていると気が付いたのは少し経ってからだった。
「これで、全部・・・。」
机の上に積み上げた蔵書を見上げて溜息を吐く。
これだけ大きな読み物、自分の部屋だったらゆっくり読めたのに。
この状況を少しだけ恨みながら、書物を片端から開いていった。
大きな横長のテーブルいっぱいに広げられたヒントになるものたち。
「最後の王・・・。アトラス・・・。偉行、奴隷の解放、国の発展に貢献・・・。」
どの文面を見てもいいことしか書いていなかった。
そんな中で、一冊の興味深い本を見つけた。
国のことがこと細かく書かれた、報告書のようなものだった。
どうやらこれの担当をしていた人は、元々馬小屋の奴隷だったらしい。
奴隷が解放されてから、結構位の高い仕事に就けたみたいだけど。
この報告書には明らかなる批判が書かれていた。
恐らく、この国の王や貴族は奴隷同士の意思を伝える方法を知らなかったのだと思う。
奴隷たちは、紙に書いた文字を必ず一文字抜かして読み始める。
上手く文章にする必要はない。
何故ならば、
『ろくに教育を受けていない文字さえ知らない下等な生き物』
という昔からの印象が根強く残っていたからだ。