雪解けの水に潜む、紅


つまり、箇条書きや少しおかしな文面でも彼らは気付かなかった。寧ろ気にも留めなかっただろう。
字を書けただけで上出来だと思われているのだ。


「この国は、腐っている。頭のイカレタ権力を振りかざす馬鹿共が絶滅しない限り、我々
奴隷たちの未来はないだろう。皆、今こそ立ち上がるのだ。」


特に気になった一文を読み上げた。


この国に暴動が起きる直前、民衆に読まれた張り紙だ。
奴隷育ちの者は、この文章を読んで立ち上がったのだと思う。
奴隷を解放したというのはあくまで表向き。彼らに対する人種差別はずっと続いていたのだと思う。


一度、自由を夢見た彼らは何も変わらなかった現状に絶望し、怒ったのだと悟った。


「戦いは、随分長引いた。強い軍隊はやはり一筋縄ではいかない。あいつらを解き放つべきだろうか。我々の命も危うくなるが、今はそんなことを考えている場合ではない。一刻も早く彼らに地獄を見せる必要があるのだ。」



そこから暫く、日記のような報告書は書かれていなかった。



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