雪解けの水に潜む、紅
この元奴隷の人も、国王も、貴族も、皆欲を持って滅ぼされている。
それは、欲望を持つ者を牽制しているのだろうか。
人間は必ずしも野望を抱かない生き物ではない。それは恐らくどんな生き物でも知っていることだろう。ましてや運命を司る神様が知らないはずがない。
だけど・・・。
「私に、欲望はあるのだろうか。」
ふと、自分の手を見つめた。
この手に私は幾つの野望を抱いているのだろう。自分でも判らないほどの野望を私は持っているのだろうか。
「私は、ティアラを見つけてどうするのだろう。」
今まで探さなくちゃ、という使命感に背中を押されて危険な道も省みずただ突っ走ってきた。
だけど、手に入れたとして私は本当にその力を使うのだろうか。
もう既にティアラの場所は突き止めていた。
そろそろ行かなければ、DDも心配するだろう。
仕方なく、立ち上がる。
私の心は決まらないまま。
ムワッとした空気が私を覆う。
締め切られた部屋に、湿気の篭った空気が充満して剥き出しの肌がじっとり暑い。
噴出すような汗に嫌な思いを感じながら、一歩ずつ歩を進めた。