雪解けの水に潜む、紅
案の定、王の自室には手紙が置いてあった。
ティアラを手にする者は必ず手紙を見なければならない。
羊皮紙よりも古ぼけた硬い紙に書かれたそれには、ティアラを手にするときの注意が書かれていた。
まず一つめは、力を持つことの意味を知ること。
二つ目、力の暴走を止めるのは血を捧げること。
三つ目は責任を持つこと。
四つ目は決して逃げないこと。
最後、五つ目はティアラを持つ者は心が綺麗で賢く聡明でなければならないということ。
私は決して心が綺麗だとは思わない。聡明だとも、賢いとも思わない。
だけど。
この世界を救うためには、力を持つティアラ自体が必要なのだ。
私は手に握った手紙を持ったまま、玉座に急いだ。
この城は崩れ始めている。ゲームクリアを望まない古城の主が私を永遠閉じ込めようとしているのだ。
私はここで留まるわけにはいかないから、縺れる足も無理に動かして。
崩れるバランスも無理やり戻して。