雪解けの水に潜む、紅



「シルビア。」
DDの焦ったような声が私を呼ぶ。
真っ暗な世界から飛び出すようにして私は元の世界に戻ってきていた。
幻想の世界は消え去ってしまっていた。
そこは元の、野原だった。

「ここには沢山の人の思いが募っているのね。」
空気に触れるとまだ、暖かいような気がした。

「さぁ、行こう。シルビアの道は、シルビアが決めろ。」


DDはその大きな翼をはためかせて私に乗るように促した。

彼の丸太のように太い足にしがみ付くと、彼の体は遥か上空に飛び上がった。
目指しているのは、思ったとおり、戦の最前線。

幾多もの軍隊が力を合わせ、もはや無力となった竜王軍を追い詰めていた。



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