雪解けの水に潜む、紅
私はそれを跳ね除けることも、抗議することもない。
唯それを受け入れ、認めるのだ。
それは王が力を持っているから、とか殺されてしまうから、ということではない。
他国に私の家族が居ることを王は知っている。
それを人質に取られてしまえば私は王に服従するしかなかった。
何百、何千という数のドラゴンが育てられている我が国は
彼らが吐き出す炎の息吹で国中の気温が上がってしまう。
嵩張るドレスの暑さが体温を上げてしまい、汗がタラタラと垂れる。
押し付けられた執務を捌き
疲労の溜まった体を伸ばした。
王の息がかかった側近は大量の執務の束を抱えて去っていった。
彼らはいつだって私を見張っている。
外に出ないように、規則を守るように。
側近や大臣は私のことを快く思っていないだろう。
他国から来た異国の子どもで、本来なら今頃奴隷という称号の元、コキを使われているはずなのに。
たった一匹の偉大なる竜王のお言葉で
無力な異国の五歳児は丁重に持て成される客人であり、国の重役となった。