雪解けの水に潜む、紅
兵士A side
英雄と呼ぶべき少女が、息を引き取った。
彼女の亡骸は、弟くんの手元を離れDDというドラゴンの末裔の手によって、ドラゴンたちの元の住処に運ばれてしまう。
あのドラゴンは少なくなってしまったドラゴンたちを連れて飛び上がった。
「オレたちはもう二度と、人間に干渉しない。シルビアと共に、オレたちは行く。オレはシルビアの息子だ。」
ドラゴンの住処は俺たちには判らない。
つまり、英雄は永遠に俺たちの元を去る。
彼女の弟は泣いていた。
山の向こうへと羽ばたいていってしまった彼らを追いかけようとしていたが、仲間によって止められていた。
「やっと、会えたんだ!どうして・・・姉さんは、俺を一人にするんだ・・・。」
彼の悲痛な叫び声は静かな空間に響き渡った。
仲間たちも、俺たちも、彼に掛ける言葉が見つからないまま時はゆっくりとだけど確実に過ぎていった。
綺麗に元通りになったこの国のこの街。舗装された石畳の上で俺たちは最初で最後の戦いの幕を下ろした。
王の、首を切ることで。
憎しみのような物を秘めた瞳で、弟くんは落ちた首をただジッと見ていた。
彼自身は自ら手に掛けるようなことはしなかったが、王の命尽きても彼の心には密かになる怒りの炎がまだメラメラと燃えているような気がした。
それぞれの国に帰ろうとした俺たちの前に、一人の幽霊が現れた。