雪解けの水に潜む、紅


音でわかったが吐いてしまったようだ。
この悪臭の中なら判らなくもない。

ツン、とした臭いも混ざり合って周囲の子もつられそうになる。

汚い水が女の子に向かってぶっ掛けられ、確かに臭いは消えたが違った異臭が放たれた。
とうとう泣き出してしまったびしょ濡れのその子の髪を掴み、兵士はズルズルと引きずっていってしまった。

列の行く先に向かう彼らを見て、この先に何が待ち構えているのか恐怖が募った。
空洞に響いた少女の鳴き声は、声を失ったように消えその後、絶叫が劈いた。

苦痛に耐えるような、助けを求めるような、涙の混じった苦しみの叫びだ。
悶々とした熱がここまで伝わってくることから推測すると炙り地獄に掛けられているみたいだった。

私もそうなるかもしれないという恐怖に耐えながら、その声から顔を背けた。
刻一刻と迫る列の並び。
誰しもの表情に想像を絶する恐れの色が混じり始めたころ、何が行われていたのか現実が目の前に突きつけられた。




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