雪解けの水に潜む、紅



その全貌が明らかになると同時に逃げ出そうともがく子どもが増えた。
恐怖に叫び、逃げ出し、助けを求めていた。

そんなパニック状態の中私はただ、佇んでいた。
黒く、大きく、強そうなドラゴンがそこに腰を下ろしていた。
目の前に押し出された子どもが小さく何かを答えている。その目は恐怖に駆られギョロギョロと上下左右ランダムに動いている。
挙動不審状態に陥るのは、当然のことのようにも思えた。

それから何かを告げられた少年は震える足を無理やり半回転させられ、服をたくし上げられ、そのむき出しの背中にドラゴンの息吹による焼印が付けられた。
まだ四歳かそこらの男の子だ。

目を見開き、泣き、喚き、声枯れるまで叫び、苦しみ、悶え、助けを求めるように宙に伸ばされた腕はフルフルと痙攣しながら空を切って弧を描くようにダラリと落ちていった。
前かがみになって倒れこんだ少年は気を失っているらしく、焼かれた背中からは熱い湯気が漂っていた。






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