雪解けの水に潜む、紅



たとえ、人間という扱いを受けなくても。
鞭で打たれても、火炙りにされても。この命は・・・ある。
そのことに安堵して、自分の番だというのに気持ちはすごく落ち着いていた。


『名前は?』
頭の中に、ドラゴンのだと思われる低い声が木霊した。

「シルビア・モンタンスト」
『この国の民か。』
「ううん、アルベセシア王国」
ドラゴンの声は疲れているようにも感じた。
このようなことを、もう何年も続けているのだろうか。
きっと体調がよくないのではないだろうか。
見た感じ、このドラゴンはまだ若そうだ。
他のドラゴンに比べると老いていそうだけれど、もっと老いたドラゴンもいるだろう。


『親はどうした。』
「大きくて恐くて強そうな生き物に食べ、られた。」

あの時の、絶望はきっと、忘れない。
・・・忘れ、られない。
『・・・憎いか。』
ドラゴンの声が、少し、本当に少しだけ、寂しさを交えたような声になった。
しっかりと聞いていなければ、気付かないほどの。



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