雪解けの水に潜む、紅


嘘は吐けない。このドラゴンは私の心の中を読むことができるから。


「許すことは絶対に、出来ない。だけど・・・憎むこともまた、私には出来ない。全ての命は等しく、何かを憎むことは犯罪者を許すことと同じくらい難しいから。」
母さまが、そう言うから。そう、言ったから。
父さまが殺されたとき、憎しみを知った私に、片割れに、母さまはいつもと変わらない笑みを頑張って浮かべて教えてくれたから。
ドラゴンの瞳はやっぱり私の心を見透かしていた。
大きなビーズみたいな目が、ジッと私を見つめてそのとき初めてドラゴンが笑ったような気がした。


『変わった奴だな。』
「・・・?」
『お前は、何よりも生きることにこだわる。扱いも二の次か。』
本当に心の中が丸見えみたい。
どうして判っちゃうんだろう。見えてるからか。

「憎むことも、許すことも、生きているから出来ます。話す事も、人を思うことも、分かり合うことも。私は・・・諦めることも、生きることの執念も知っています。」
母さまの言葉はいつだって私を人より強くしてくれた。
くだらない、って勘繰っていた弟と違う。私はいつも母さまの言葉に生かされていた。
必ず、私は生きられる。生き続けられる。生き続ければ、きっと会える。また、会える。
『背を出せ。』



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