雪解けの水に潜む、紅
だけど、いつまで待っても背中に痛みは襲ってこない。
何で?と疑問に思いチラリと横を見る。
監視するように立っていた兵士の数人がドラゴンに駆け寄る。
「あの、ディモンドさま?」
「行っていい。」
ゆっくりとした口調で、彼の言葉が響き渡った。
紋章も何も刻まれていない。殺せってこと?
背に触れてみても熱も痛みも感じない。
「あの娘は全てが美しい。ティアラを見つけることの出来る、運命の女神だ。」
「なっ!」
ドラゴンの言葉に兵士はもちろん、後ろにいた子ども―恐らくこの国の子どもだろう―までも息を飲んで私を見てきた。
幾筋もの視線が背中に突き刺さる。
手を離すと、ワンピースの裾が翻りながらもとの形に戻った。
傍で見ていた物腰の柔らかそうな狐目の男が私の前に出てきて膝を突いた。
周りの兵士たちは彼に習い膝をつく。どうやらこの人はとっても偉いみたいだ。
「それじゃあ、ディモンド情けない部下と後を頼みましたよ。」