雪解けの水に潜む、紅
五歳の誕生日の日。
立派な顎鬚を蓄えた、親戚のオジサマに連れられて訪れたとある国。
魔法が飛び交う美しい街。
綺麗に並べられた石畳の上を、あの子と2人はしゃいで歩いた。
道の側面に並ぶ色とりどりの屋台で少しずつ買ってもらいながら、国のお祭りに参加しているかのように、私たちはただ、はしゃぎ楽しんでいた。
オジサマが勧める食事処で私たちの五歳を祝う誕生日会がささやかに行われてた、夕方に近いお昼過ぎ。
フォークでクリームたっぷりのケーキを口いっぱいに頬張ろうとしていた、その時。
店の微かな電気でキラキラ光るガラスのコップが、突然大きなおとを立てながら倒れた。
橙色したオレンジジュースが机を這い進み大理石の床に滝の如く零れ落ちる。
その滑走路の上を転がって、コップが絶叫を告げ砕ける。
それとほぼ同時に、大きな揺れが建物と人を波打たせた。
揺れる体と視界。
危ないと包まれた母さまの腕の中で、バラバラになったガラスの欠片を見つめていた。