雪解けの水に潜む、紅


「ふん。」

彼に手を取られ、ディモンドという名を持つドラゴンに背を向けた。
ゆっくりと並んできた列を追い越し、ドラゴンの息吹の熱を背中に感じながら私はただ訳が判らないまま、引っ張られていくことしか出来なかった。

「大丈夫ですか?足が痛いのならば、抱えても?」
「・・・私の手に触れる事すら嫌っているのに、そんな事をしたらあなたが、狂乱してしまうのでは?」

馬鹿にしたような笑いが漏れた。ここまで露骨に嫌な顔をされてはいくら五歳児といえども気付いてしまう。
毛嫌いされ、汚らしいと思われているというのに、いつまでも手を取られているほど私も温厚じゃない。

「それは申し訳ない。ではこの部屋で少しは綺麗にしてもらってください。」

少しは、の部分を強調して彼は私をその部屋に押し込んだ。

ドサッと放り込まれ、倒れこむも起き上がる前に腕を取られ侍女たちに捕まえられた。

煤だらけになった今日仕立てたばかりの新しい服が剥ぎ取られ、たっぷりの湯が張られたお風呂に放り込まれると緊張も和らぎ、その暖かさに瞳を閉じた。

髪や体を各々に洗われ擦られ、煤や泥で汚れた体はみるみる綺麗になっていった。
お風呂から出ると用意されていた嵩張るドレスの前に立たされ、試着に試着を重ねやっと納得した侍女の手によって髪やアクセサリーや靴で飾り立てられた。

宝石や金でキラキラの格好を鏡越しに見せられ、美しいです、と言われても納得は出来なかった。
むしろチカチカする。



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