雪解けの水に潜む、紅
その言葉に弾かれたように顔を上げ、傍に居た上メイドに剣と研磨剤を押し付け、布を背後に放り投げて私の姿を見た。
綺麗に着飾られて正解だったらしい。
お気に入りの長い金髪に色とりどりの宝石が散りばめられ、金のブレスレットやピアス、ネックレスが白い肌を覆う。
鮮やかなピンクのグラデーションが開いた花のようなドレス。
とにかく綺麗に、をモットーにされたから。
どうやらこの王さま、美しいものが好きみたい。
ティアラだって要は冠でしょう?
私を見る黒い欲望の目は爛々と輝き、何かを求めているようにも見えた。
先ほどの失礼な彼が私を王さまの前まで連れて行くと歴代の王たちの罵りの言葉が止んだ。
「この方は、アルベセシア王国のシルビア・モンタンストさま!お父上は我が国と提携されておった。」
気が付いたように、殺された王が声を張り上げた。
ラストネームを聞いた歴代の王たちも父の名を上げた。
どうやら私の父さまはとても有名な人だったらしい。
「ディモンド竜王様のお話では、心の美しいティアラに似合うお方であるということです。」
恭しく頭を下げた執事の言葉に王さまが近づいてきた。
それから囁かれた言葉に私は、成す術もなくそこに立ち竦みそれを受け入れざるを得なかった。
家族の為に。母さまのために。父さまの名誉のために。