雪解けの水に潜む、紅



私は、命からがら逃げ出した後、大事故に巻き込まれ行方不明になった、
とディルダ国以外の民にそう告げられることになってしまった。


事実上、革命を齎した偉人の娘は惜しくもその命を落とすことになったのだ、と。

だけど死んでいないから、私の遺体は見つからないって事にされてしまった。
それ以来、私はずっと十三年もの間、城の奥に幽閉され続けた。
そう、私は永久客人であり、国の重役であり、ティアラを見つける生贄である。

ティアラというものがどういったものなのか、私は何も判らない。
ただ今まで見てきた風景を、私は感じて見る事がもう出来ないと突きつけられたのである。
窓越しに見る、季節の移り変わりをこんなにも虚しく感じたことは今まで無かった。




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