雪解けの水に潜む、紅
広い自室の中誰もいなくなって一人ぼっちの私。
最愛なる弟はどうしているだろうか。
寂しさに泣き、私を求めては居ないだろうか。
正直に言ってしまえば、寂しいのは私だ。
あの日、あの時、もしも逆だったのなら。私がオジサマに担がれていたのなら、そう、どうしても考えてしまうのだ。
だけど、私が助かったとしても、同じ血を分けた弟を私はこの目で見るまで決して諦めなかっただろう。
それだけは、自信を持っていえるから。
「水鏡、使おうかな・・・。」
私の最も得意とする魔法。遠く離れたものを見ることが出来る魔法。
昔はよく使っていた。海の水よりも多い本の中から得た呪文。
だけどしょっちゅう使えるわけじゃない。
よく、と言っても二ヶ月に一回使えるか位だ。
それほどまでに強力な魔法であるという。
窓の外は、薄暗く冬の訪れを告げていた。
冬の寒さを思い出し、ブルッと一つ身震いをして苦笑した。
その特有の冷たさを私はもう味わうことがないのだろうな、と遠き目で過去を顧みる。