雪解けの水に潜む、紅



「ふ~。」
熱いお湯が張られた風呂に浸かると、汚れも悩みも何もかも消え去っていくような気がするから好きだ。

盥―たらい―を手にして、並々の湯を注いだ。
歪んだ波紋が私の顔を映す。

揺れ動く水面に映る私の唇が微かに動いて、水の色は透明から、青に。青から、赤に。赤から黄金に変わりそれは鏡となった。

ろうそくを灯したような鈍い光の中、十三年の時を思わせる老いたオジサマが『目に見えた』。

弟の声が聞こえて、オジサマが笑って、私の知らない可愛らしい女の子が弟の腕に甘えて唇を尖らせた。


弟だ。私が、母さまが、会いたいと願った弟だ。




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