雪解けの水に潜む、紅
自由になりたいと頭の中を木霊する私の声を、私は心の奥に仕舞い込んで開くことが無いよう何度も何度も鍵を掛けてきた。
全ては遠くに住む家族のため。
家族の、安全のため。私は守るために幽閉され続けているというのに。
血を分けた最愛の弟はこの国の王以上に裏切り者で、犯罪者。
赤の他人。突きつけられた実の弟からの言葉。
その言葉は頭の中でグルグル回って私を壊していった。
大切に思っているのに。会いたいと、何度も冀った―こいねがった―のに・・・。
私はいつも、いつだって・・・。
母さま、憎いよ。
私は何のために生きているのだろう。
辛いよ・・・。生きることを、諦めてしまいたい。
助けて。誰か、助けて・・・。
此処から出たい。ここから出して。助けて。
もう、殺して・・・。
母さまから貰い、守られた命・・・。
守るために生きてきたハズだった。
必要ないと、言われたように感じるの・・・。
あの時。
食われた母さまも、囚われた私も見捨てて置いて行ったくせに。