雪解けの水に潜む、紅
逃げたくせに。
見殺しにしたくせに・・・。あいつらが、母さまを殺したの・・・。
自分の命欲しさにさっさと逃げ帰った人がどうしてあんなに幸せそうに生きているの・・・。
どうして、私は籠の中で生き続けなければならないの。
自由に外に出ることも許されない、私が・・・。
憎しみを瞳に込めたまま、バスタオルを体に巻き花園の隣にある墓石場に向かった。
復讐という言葉が心の中で密かに渦巻いている。
幽体の母さまが自分の冷たい墓石に座り込んでいた。
「あの2人が・・・憎いです。」
「憎しみは悲しみにしかなりませんよ、シルビア。」
「だけど、母さま。恐怖に負け、早々と逃げ去ったあいつらがどうして・・・。どうして、あんなにも・・・幸せ、そうに・・・。」
私たちは苦しみ続けているというのに。
逃げたものは偉いのか。家族の為に耐え続けているものよりも。
死んでもなお、私によって縛られる母さま。
ドラゴンの言葉により縛られる私。
「いいえ、シルビア。今は忘れるのです。あの王の言うティアラを探すのです。力を持つティアラを・・・。」
「だけど、母さま。私は力なんて欲しくありません。私は・・・思い知らせてやりたい・・・。」
私たちの、思いを。
母さまは静かに首を振った。