雪解けの水に潜む、紅
ドラゴンや、王さまが口を酸っぱくして言うのは、いつだってティアラのこと。
万物にも勝る美しさ。他の何も及ばぬ強さ。そんな偉大な力を持つティアラ。
この国の王はそれを追い求め、私が持ってくるのを待ち望んでいる。
「ティアラを探して・・・あなたは自由よ・・・。」
「いいえ、母さま。私がティアラを見つけ戻っても、王は私を手放したりしないでしょう。私は奴隷になるか今までの悪行を知る厄介者として殺されるかです。」
どの道、私に自由は無い。
どう転がっても、私は決して自由になどなれない。
ティアラは心の美しいものだけに与えられる。
私は、今の私は美しい心なんてもっていない。
宝石に飾られ、自らを失った哀れな十八でしかない。
母さまは私の頬に触れた。氷のように冷たくて、雪のように白かった。
伝う涙が洗い流してくれるなら。私は幾らでも泣く事が出来る。
信じていた、弟からの予期せぬ裏切り。
胸が引き裂かれんばかりに痛み、苦しみに悶えた。