雪解けの水に潜む、紅



その一番上に書かれていたのは、死者のリスト。
「何これ、何この人の数・・・。」


およそ五十ページにも渡ってビッシリと書き込まれた名前。
これ全て死亡者の名前だとしたら・・・。
パラパラと捲っていた途中で手が止まる。


ミル・ティンカーズ(十五)


名前の右側に小さく写真が貼られている。
この間水鏡で見た、あの少女だった。

死んだの?どうして、何があったの・・・。
最後の一枚の書類で全てを理解した。
「ティターナ国には、ティアラは無い。」
それから、写真が幾つか。

私の記憶が正しければ緑豊かな、小さめの国で人の集まる場所だったはず。
それなのに、焼け野原しかない。
赤く所々焼け爛れ、熔かされたコンクリートの合間から見える煤にまみれた土。
おそらく人のものと思われる、原形を留めていない人骨の山。
「ドラゴンだ・・・。ドラゴンの息吹を使ったの・・・?」

それからというもの、ディルダ国の王は手当たり次第にミルバ軍を送り込み、
計四十三もの国を次々と滅ぼしてしまった。

そうして私の部屋に収まらないほどの死者のリストが持ち寄られてきた。
その隅々まで目を通したが、弟の名前は見つからなかった。



< 35 / 121 >

この作品をシェア

pagetop