雪解けの水に潜む、紅


アルベセシア、ダンムンド、リトルカニア、カニアジスト、ボールガンド、ミルタニア、オリバスティー、マーカロニオ、シャルッテ、ディルダ。


残った国はこれだけになってしまった。
全て、ティアラを求める王の命令で。


そんな中、一人の兵士が私の部屋を訪れた。

正義感が強く自分の考えを絶対に通そうとする頑固な男。

その男が手に持っていたのは、二つに割れた大きな石盤。

表面には何か鋭いもので削ったような跡があった。


「国王陛下はこれが何なのか判らないと言われ、必要ないガラクタだと言っていました。だけど私にはどうしても大切なものにしか見えないのです。」

はい、と渡されるも、重すぎて持っていられない。
一応ありがとうと伝えるも去っていった兵士の背中を、首をかしげながら見送る。
あの人あんなに物腰の柔らかそうな人だったっけ?
そう思ってこっそりと後を付けてみた。
もちろん、大きめのポシェットに石盤を忍ばせて。



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