雪解けの水に潜む、紅
「・・・ろ、ア。」
誰だろう、低くて機嫌の悪そうな声が私を呼んでいる、気がする。
「起きろ、シルビア!」
「はい、ごめんなさい!」
耳元で木霊した叫び声に鼓膜が震えた。や、破れるかと思った・・・。
意識が覚醒し、記憶が舞い戻ると―決して記憶喪失だったわけじゃない。少し眠気でボーっとしていただけだ―穴の開いた所がジクジク痛む。
ディモンドは鎖で縛られ、もはや一歩も動けない状態になっていた。
「そんな、あなたは悪くないのに・・・。」
「いや、そいつを殺した。」
「私の為に、よ。罰せられるなら私にすれば良い。」
こんな可哀想な仕打ちは無いわ。
目に溜まる涙を堪えて壁に目をやった。
私一人が出入りできるような穴が開いている。
時々、その穴の向こうからドン、ドン、という大きな音が響く。