雪解けの水に潜む、紅
だけどその顔がどんな表情をしているのか、見上げるだけの気力はもはや残ってはいなかった。
ぐったりと力を抜き、ただその時を待った。
手に痛みが走り、叫んだ。
彼は無言で、行動を続けた。
その痛みは左手にも及び、更に足の釘も抜かれ自由となった私の体は重力に従って地面に落ちた。
「や、殺・・・し、て・・・ね、がっ・・・も、・・・じゆ、に・・・」
声にならない言葉が私の唇から漏れた。
もう殺してくれ、自由にしてくれ、と願う私の思いは聞き入れられることはなかった。
釘を抜いた男が私を抱き起こし魔法で穴を塞いだ。
痛みは消えた、傷も癒えた。
この男は、泣いていた。