雪解けの水に潜む、紅
新しい、命
半月も経ってしまっていた事にショックを受ける。
グツグツと煮え滾るようだったマグマ特有の熱さが消えていく。
不思議に思って振り返ると、先ほどまでマグマがあった場所は色の濃い土になっている。
その真ん中に遠目でも判る程の卵がポツン、と一つ転がっていた。
『満月の出ている間だけ、マグマが消える。』
この間のディモンドの言葉を思い出し、慌てて立ち上がる。
暫くの間ずっと本当の意味で座りっぱなしだったからか、上手くバランスが取れず赤子のようにふらつく。
それでもやっとのことで卵の前にたどり着くとその大きさに頭を抱える羽目になった。
「こんな大きい卵、どうやって運ぶの?」
満月が出ている間しかマグマは消えないのに・・・。
ハッと穴の外を見るとしっかりと満月が輝いていた。
だけど、風で棚引いて来る薄い雲を見つけ、慌てて一メートル程もある歪な斑点模様の卵を両手と片足を使い持ち上げた。
重たい。
手汗で滑りそうになりながら、足元が見えないので慎重に歩くしかない。
踏みしめるように歩いていると、先ほど卵があった場所からジワジワとマグマが溢れ出して来た。
あの雲が満月に掛かってしまったらしい。
急がないと、足から何から溶けてしまう。
大慌てでだけど慎重に走り出す。
だけどまるで火山の噴火のように噴出すマグマの勢いは凄まじく、ドレスの裾にほんの一滴が触れてしまった。
ドレスはバーナーを当てたように焦げ始め、開いた穴はどんどん開いていく。
更にマグマの波は踵に到達しようとしていた。
それを目にした瞬間、私の中の緊急警報が鳴り私はいつの間にかディモンドの亡骸の前に居た。