雪解けの水に潜む、紅



下りの途中まで行った時、頭上で鳥の鳴き声が聞こえて思わず顔を上げた。
ただの謡鳥だと認識すると顔を前に戻した。
その途中、ペン先で突いたような小さな光が見えた気がした。


不思議に思って、頭を傾け遥かに高い山々を見上げた。


よく見えなくて諦めようとしたとき、もう一度視界に光が入った。



「シルビア?」
「ちょっと待って、DD」


来た道を引き返し瓦礫のてっぺんに立つと、山が少し近くに感じる。
光は、確かに瞬いていた。
この国を囲う山の中でも群を抜いて高い山。
アンジェリッショ山の、雲に包まれた頂点に点滅する銀の光を見た。
先ほどよりも見えた光の輝きは増したようだった。



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