雪解けの水に潜む、紅
そんなはずない。弟なんて、何かの間違いよ。
「心が読めるから、ドラゴンは。」
今、私の心も読んだという事だろうか。
ジュディの心を読み、弟と言うことを知ったのだろうか。
DDは、私の心の痛みもジュディの痛みも知っているのだろうか。
私を乗せてどこかへ運ぶDDを見る。
「シルビアの弟・・・苦しんでた。恋人殺されて、シルビアに見捨てられて。」
そんなこと、知らない。
だけどDDの言葉は、私を更に混乱に貶めた。
「泣いてた。心、悲しんでた。本当に一人ぼっちになった。ジュディ、今までも、これからも、一人ぼっち。」
今までも・・・。
あの日。ジュディを乗せた馬車は亡き母と捕まった私を残して無情にも去っていった。
夕日の沈む方向に一片の迷いもなく、消えていった。
母さまは幽霊だけれど、私と一緒。
父さまも遠い昔に神に召された。
モンタンスト家のオジサマと二人、幸せな暮らしをしていたはずのジュディ。
だけどあなたも苦しんでいたというの?
普通の生活をしていたのに。
「家族、遠くで生きていると確信していたシルビアとは違う。不確かな情報しか入ってこないジュディは、やってきた役人の死んだと言う言葉を信じるしかなかった。」
「彼にとって、最愛の姉を亡くしたという事実は身を切られるより痛いことだった。だからこそ、皆死んでしまったと思い込み、もう関係のない人だと言い聞かせ、自分自身の為に他人の言葉を使っていたんだ。」