雪解けの水に潜む、紅



DDの力を借りない、という意思は既に彼に伝わっていたらしい。
開きかけていた翼を仕舞い、黒い瞳に決意の色を見せて彼も私の隣に並んだ。


アンジェリッショ山のふもとにまで来ると、葉が落ち丸裸になったヒョロヒョロの木が情けなさそうに所々で突っ立っていた。

足元には薄らと霜が張っている。

そろそろ雪も降るかもしれない。

この国に積もる積雪量は、他の国と比べて桁違いに多い。


それだけの寒さの中この薄着でいられるとは思えない。
出来るだけ早く、この戦いを穏便に終わらせたい。
願うなら、そう。この国が元のような、平和な国になれるように。


素足が霜を踏み水分を含んだ土を踏みしめると、冷たさが伝わって身震いした。
隣で歩くDDはマグマ生まれの所為か、冷たさに顔を歪めている。


「オレたちはあまり冬には向かない。」
「マグマの中で産み落とされて、マグマの中で暖められて、マグマの傍で孵化したドラゴンは暖かいところが好きなんだね?」



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