雪解けの水に潜む、紅
色々な、欲望


「シルビアさま?」
王の側近から声が掛かり、私は記憶から戻ってきた。
執務をこなす手が止まっていたようだ。
どの書類を見ても、王が隠蔽しようとしている数々の悪行だが。
それを全て私にかぶせることで彼はずっとこの国の頂点に君臨し続けている。

次の書類を手に取り、内容を見ながら自分自身を嘲笑った。
奴隷として扱われてしまうはずだった私が、部下や使用人を従えて王宮の一部を我が物として住んでいるなんて。
それに、悪行を被るだけの執務で生活に不備がないような毎日が送られているのだ。
誰がそれを予想できただろうか。できたはずがない。


今年、十八を迎えた私でさえ未だ半信半疑であるのだから。



< 8 / 121 >

この作品をシェア

pagetop