雪解けの水に潜む、紅
夢見心地だった瞳は最早私の姿を捉えて離さない。
段々と敵意を剥き出しにして、口からは肉の腐った臭いがする。
立ち上がると、それはあの城よりも大きい気がした。
「おめ、誰だ。」
「私はシルビアよ!」
「おで、お前知らない。」
「知っているはずよ!私よ、シルビア!昔、あなたを助けた!」
でっち上げの嘘でしかない。
「おで、お前知らない。」
「あなたが海に落ちたとき、助けてあげたのは誰?」
こんなの嘘に決まっている。彼らは決して水に近づかない。
それにこのポンコツ頭の巨人は気付くだろうか。
「おで、お前知っている?」
「知っているはずよ。私はあなたを知っているもの。」
私は、彼のズボンの裾に書かれた名前を見た。