雪解けの水に潜む、紅
私は自分で答えを見つけなければいけない。
憎しみは、私の中でとうに去っていた。
声の主の思惑は見事に外れていたのだ。
「こんなお芝居、私には通用しないのだけれど。」
何も答えてはくれなかった。
「思い出は、良くも悪くも自分だけの物よ。」
過去がどんな物であれ、それはいくらでも変えることが出来る。
自分の中だけなら、過去はいくらでも弄くれる。
未来も、現在も変わってしまうけれど、幻想の世界ならそれは可能なのだ。
やっぱり、何も言わなかった。
それが迷っているようには思えなかった。
静かな怒り、悲しみ、苦痛。
思惑が外れたことに対しての負の感情しかなかった。
「さっさと進まなくちゃ。時間が無いんだから。」
この間にも大勢の人が傷付き苦しんでいる。
助けてあげなくちゃ。ティアラによって助かると信じているから。
私の進むべき道は、私が知っている。
クネクネとした曲がり道ばかりの城の中も、まるで自分の小さな家のように何処に何があるのか判る気がした。
右、左、と方向を変えるたび、一直線の道を歩いているような錯覚に陥る。
やがて私は、東側に立つ一本の高い塔のふもとに来た。
まるで牢獄のような雰囲気に背筋が伸びる。