雪解けの水に潜む、紅
現に足元には、ゴツゴツとした人骨が落ちている。
肉も何もなくなった惨い姿の骸骨たちが、真っ暗な穴の目で私を見る。
今にも動き出しそうな様子に唾を飲み込む。
私は、前に行かなくちゃいけない。
彼らは動かない。死んだ人は、もう戻ってはこない。
確信めいた言葉を自分に浴びせ、震える足で一歩を踏み出した。
私の足にまとわりつく、洗濯籠ほどの巨大な像蜘蛛が脂ぎった目を向けてくる。
何も見ないように前だけを見ていると、天井から長い蜘蛛の足がいきなり落ちてきた。
目の前に現れた巨体に泣きそうになりながらも、私はあくまで冷静にただ早足で階段を登りきった。
幻覚はあくまで幻覚でしかない。唸り、今にも飛び掛ってきそうな元気な獅子。
だけどここには私以外実際の生き物はいない。
ならば普通、獅子は生きていられない。食べる物がないもの。
案の定、私に襲い掛かった獅子は私を通り抜け、ノイズがかった映像に変わった。
「この城は全て幻影なの?」
声の主が答えない限りその真相は判らないまま。
結局私の足は、最上階に辿り着いてしまった。
一番上には二つの扉があった。