Dead Flower





私の中学校生活は予想していたよりも楽しく、嬉しいことばかりだった。

「琴音、一緒に行こう!」

「うんっ」


琴音とは一番の友達、いや親友になった。

悩みがあればすぐ相談できる最高の親友だった。



琴音は身体が弱く、度々学校を休むこともあったけど、そんな日はお見舞いに行ったりメールを送ったりしていた。




そして、


「ほらょ!」

「あたッ」

後ろから本か何かで頭を叩かれた。

振り向くと男の子がひとり、私の後ろに立っていた。


「教科書!忘れたら今日ついていけないぞ」

「あ、持ってきてくれたの?
ゴメン、ありがとう、逆井」

逆井は私に教科書を渡すと、踵を返して先に行った。

「………」

隣から、妙な視線を感じる。

「……何よ」

「え、いやぁ、温かいお方でいいなぁと……。
なんかいい感……」

「あああっ。うるさい!余計なこと言わないィ!!」

「きゃー」

顔を赤くして叫ぶ私から琴音はワザとらしく悲鳴をあげて駆け出す。

「………もう」


琴音は知っているのだ。






私が、逆井祐哉が好きなことを。














友達がいて、親友がいて、好きな人がいて、毎日が楽しくて…。

とても満たされている日々。

















〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・

















だが、そんな日々は、突如として終わりを告げるのだった。




それは入学して半年ぐらい過ぎた頃だったかな。


そこから、幸せが崩れてしまったんだよね。














〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・





そんなこと、私は知る筈もないのです。






「―――ッ!!」

鈍い音がして叩きつけられた身体に痛みが走る。


痛いよ。

女子は固まって私に暴言を吐き、その言葉ひとつひとつが胸を射るように刺さる。

男子もそれを見て悪口を言ったり、嘲笑したりしている。


すると、杖をついて身体のそこかしらに傷のついた少女が私の前に立った。


「どうしてくれんのよ!この足!!」

彼女は怪我した足を指し、私を見下ろす。

「ねぇ、金払えば済むと思わないでよね!?
足だけじゃない!!
身体もところどころ傷だらけよ!!
なんで私がこうならなきゃなんないのよ!!?
私、あんたに何かした!?」


激しい口調で詰め寄られ、ぶるぶると首を横に振る。

「なら無差別!?
だったら尚更許せないわよ!!」

俯いていた顔をあげると、怪我をした少女は頑張って私に近づき、平手打ちをした。

パン!、と再び鈍い音がした。


「……っざけんなよ…?」


彼女は吐き捨て、他のみんなもぞろぞろとその場を離れる。

私は座り込んだまま呆然としていた。







〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・

今から少し前に遡る。


文化祭の日。
私たちは劇をやった。

劇は無事成功で舞台裏でみんなが話したりしてたときだった。







―――ガシャーンッ!




「きゃああああッ」



突如、何かが割れるような大きな音とつんざくような悲鳴があがった。


「……か、香菜実…!!」


声の方を見ると様々な大きな道具や機材などの下敷きになっているクラスメートの姿があった。

その身体からはじわりと血が滲み、少しずつ広がっていく。


私は驚き、その場に立ち尽くした。

周りも同じだったのだろう。


彼女に駆け寄ったのはほんの数人であった。




いや、本当はそれだけじゃなかったのかもしれない。








〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・



教室。

みんなはガヤガヤしていて、私は席に着いてただ下を向いていた。

琴音は今日、劇が終わったあとすぐに帰ってしまったのでいない。



すると、数人が私の机の前に立った。


「……?」


そして、とんでもないことを言い放つ。














「やったの、あんたでしょ?」














「―――……え?」




彼女は今、なんと言った?


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