Dead Flower
「とぼけるなよ!お前じゃなきゃ誰なんだよ!!」
「あの機材の一番近くにいたのはあんたなんだ。
あんたしかいないだろ!!」
更に私に詰め寄ってくる。
周りの人もざわつき始め、「伊月さんがやったんだ?」「最悪だな」などの声が聞こえる。
「ちょ、ちょっと待ってよ!
私、やってない!!」
必死に叫ぶ。
だって私、やってない……。
やってないのに。
「やってないって証拠があんのかよ?」
「…っ」
そんな、証拠なんて言われたって、いきなり起きたことだったし、私は誰とも話していなかった。
「…ないんだろ?」
「……や、やってないってば!!本当に、本当に……やってないの…!!」
証拠より、もう叫ぶしかない。
無罪を主張するしか術はない。
「ねえ、本当にやってないんだって!!」
「うるせーな!!」
男子の怒号が響き、小さくなってしまう。
「お前しかいないんだよ…!
お前以外に、誰がやったっていうんだよ…!?」
「………っ、で…も……」
またも言いよどんでしまう。
でも……、本当に…。
「もういい。
今後お前がどんなことになろうが、全員が敵になるぞ?」
寒気が、した。
「……覚悟、しといた方がいいぞ」
冷たく言い放たれた言葉に冷や汗と寒気が更に襲う。
私の周りの人は少しずつ離れていく。
急激に力が抜け、へたり込んだ。
そんな……、そんな、どうして………。
それから、私へのイジメが始まった。
クラス全員が敵に回った。
誰も助けない。助けようとしない。
琴音が私の味方をしていることはみんな知っている。
だからみんな彼女がいるときはイジメをしない。
琴音は身体が弱く、欠席が多いため、琴音のせいでイジメがやんだりすることはない。
そして、怪我をした子が来たとき、更にイジメはエスカレートした。
「…華?、最近元気がないけど、どうしたの?」
琴音が学校に来たとき、急に問われた。
「…え、…。…あ、そんなこと………なぃょ」
最後の方は声がかすれた。
まさか琴音につかれるとは思っていなかった。
「そう…?華がそう言うなら、いいんだけど…」
琴音をチラッと見ると心なしか少し虚ろな目をしていた。
「…琴音だって、最近休み多いじゃん。
大丈夫なの?」
咄嗟に話題をかえる。
琴音に、知られたくなかった。
「うん……。
最近体調がよくなくて…。
たまにしか来れないの」
琴音は残念そうに目を伏せた。
「……そう」
知られたくない。琴音だけには。
私の味方は、琴音だけだから。
イジメが始まってどのくらい時間が経っただろうか。
もう何ヶ月も経ったっけ?
まだ何週間しか経ってないっけ?あれ?
時間の感覚がわからない。
いじめられているときは叩かれる瞬間がスローモーションのように一秒を通り越して何十分になる。
家に着くと早送りのようにベッドにつくまでの時間になる。
ベッドの上で私は独り明日の恐怖に震えて泣き、眠れない夜を過ごす。
毎日、痛みと恐怖がじわじわと私を蝕む。
唯一の希望であった琴音とも、最近は全く話せていない。
話せない。
話せなかった。
話したく、ない。
誰とも。
話すのが、怖い。
でも、学校を休むと親が心配する。
反抗するのもあるけど、今の私にそんな勇気はない。
多分ね、もう何日も経ったと思うんだ。
だからね、もう、
終わりだよ。