Dead Flower
ジャリ、と地面を踏む音がした。
花崎中。名前の通り、綺麗な花々が美しく咲いている。
校庭の真ん中に立ち、校舎を前にする。
「…………」
長谷部、という名の刑事は事件が記録されたノートのある記事を眺めていた。
中にはページごとに事細かに打ち込まれた文字たちが並び、記事の切りはりとこちら側で手書きでかかれた情報が記されている。
長谷部はそのひとつに興味を惹かれた。
あまり記事がなく、1、2枚しかはられていないが、この事件の真相がわからない。
「…長谷部さん、何見てるんですか?」
後輩の渡瀬が横から顔を覗かせる。
「…ああ、この事件ですか。
確かに妙ですよね……」
渡瀬は顔色を濁らせてノートを見る。
長谷部は黙り込んで、考えていた。
「この事件、どうお思いですか?長谷部さん」
渡瀬が長谷部の顔を見上げると、長谷部は一度目を瞑り、静かに開いた。
「……俺にも、よくわからない。
だが、解いてみたい気持ちはある。
もう少し、俺は調査を行うよ」
「そうですか、だったら自分も!
ご同行します!」
渡瀬はビシッと敬礼をした。
「一緒に解決?しましょう…、
花崎中、女子生徒自殺事件について!」
『花崎中、女子生徒自殺事件』
12月20日、花崎中1年5組、伊月 華が首を吊って自ら命を絶った。
第一発見者は福田琴音。
いつもより早めに学校にくると、教室で彼女が首を吊っていたという。
伊月 華が自殺した理由は恐らく、他の女子生徒に怪我をさせたことによるイジメが耐えられなかった、と考えられる。
両親はイジメのことを知らなかったが、最近伊月華が親を避けていた、という。
「問題はここですよね」
渡瀬は腕を組んでうーん、と声をあげた。
「イジメによって自殺した例は多数ありますが………、何故かこれは……」
「イジメを受けた期間が1ヶ月ほどしかない、ということ……」
今まで見てきたイジメからの自殺事件は、全てイジメの期間が約半年〜一年以上続き、耐えられなくなった、というものであった。
それが、今回の事件は1ヶ月。
しかもイジメの内容は他に死亡した例よりはそう酷くない。
何故、彼女はこんな僅かなことで命を絶ったのか。
「…わかりません」
渡瀬は小さく声を漏らした。
確かに長谷部だってそこまでこの事件を理解できていない。
「……まだ、調査の必要がありそうだな」