あなたのキスで世界は変わる
「あーあ……。教頭に邪魔されちゃったね」
先生が悲しく笑う。
私も悲しい。
でも、やっと伝えられたんだ。
想い続けてきたこと。
気持ちの全てを言えた気なんか全然しないけど、でもそれでも言えて良かった。
勇気を出して手を伸ばすと先生の手の先をきゅっと握る。ゴツゴツしてて大きい、私の大好きな手。
「俺、行かなきゃ…」
「うん…」
「お前も、もう帰れ…」
「うん…わかってる…」
ふたりの間にある、この切ない空気感にまた泣きそうになる。
言っては、くれないの?
私を抱きしめた理由。
…キスした理由とか。
最後まで、教えてはくれないんだね。
やっぱり、ずるいなぁ。
「あ、荒田先生!職員会議遅れちゃいますよ!」
たまたま廊下を通りかかった隣の教室の担任が先生に向って叫ぶ。
咄嗟に離した手を胸元に持って行く。
…やば、見られた…?